心に深く地震の傷跡…遺品手つかず、玄関で夫婦待つ愛犬
7月13日3時4分配信 読売新聞
増水で建物の一部が流された湯ノ倉温泉地区の「湯栄館」(左奥)。土砂崩れダムからは越流も確認された(宮城県栗原市で、読売機から)=林陽一撮影
死を受け入れられない遺族、土砂の下に消えた肉親を待ち続ける家族。計23人の死者と行方不明者を出した岩手・宮城内陸地震は14日で発生から1か月が経過するが、地震がえぐった関係者の心の傷跡は、今なお生々しい。
宮城県大崎市の土木作業員樋野政行さん(59)の義姉きよえさん(72)は毎朝、霊前に手を合わせ、遺影に話しかけようとしては、ためらう。樋野さんがふらりと現れそうな気がしてならないからだ。
山菜が採れるポイントを知り尽くしていた。あの日もタケノコを採るため、同県栗原市の湯浜温泉付近を車で走行中に被災した。「死んだら骨はヘリで山にまいてほしいな」と話すほど、山をこよなく愛した。戒名、好岳政心居士。「何だか分からない一瞬の出来事で、苦しまずによかったのかもしれない」。きよえさんはそう自分に言い聞かせる。
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福島県いわき市の会社員石井道隆さん(55)は、船で地元の港を出て一番に磯に上がり、仲間より先に釣りを始めようとして土砂崩れに巻き込まれた。釣り歴30年余。当日のさおなどが霊前近くに置かれている。「まだ何も片づけられないんです。お父さんの物に囲まれていると戻ってくるんじゃないかと思えて」。妻初枝さん(55)の声がしゃがれた。
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栗原市内のつり橋で消息を絶った仙台市泉区の森正弘さん(61)、洋子さん(58)夫婦には子供がおらず、10年ほど愛犬ティナを娘のようにかわいがってきた。ティナを預かる正弘さんの姉(66)は、玄関でドアノブを見つめるいたいけな姿に胸が締めつけられる。
危険があるとして、先月末から捜索は中断したまま。6日に現地を訪ねた。運命を恨んだ。「地震がせめて1分でもずれていてくれたら」
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倒壊した栗原市の旅館「駒の湯温泉」従業員佐藤幸雄さん(62)の弟熊谷正勝さん(56)は「発見の連絡が来るかも」と、携帯電話を手放せない日が続く。
2人でよく一升瓶を空にした。先月下旬には、兄が好きだった地酒「栗駒山」を買い、テーブルに妻こう子さん(56)を呼んだ。三つのコップに酒をつぎ、1杯はこう子さんに渡した。自分は「これは幸雄ちゃんの分」と両手にコップを持った。「いつまで土の中にいるんだ。頑固者」。酒に、涙の味がした。
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